世界潮流とはー出生前診断・胎児治療における日本とのかい離

Fetal Medicine Foundationとは

Fetal Medicine Foundation (FMF)とは、英国の慈善団体で20年以上にわたり、胎児診断などの研究や教育を支援している組織である。

Kypros Nicolaidesが代表を務める世界最大の母体・胎児医療の団体組織といって良いだろう。
興味深いのが、ロンドン大学キングスカレッジの教授である彼が、登録慈善団体としてFMFを運営していると言うことである。

FMFは、以下に挙げるような多方面の臨床研究の遂行と教育を行っていると同時に、妊娠初期の胎児染色体異常の診断や妊娠高血圧症候群のハイリスク群の抽出などに対する国際的に標準化された計算プログラムを供給している。

私もそうであるが、NTや鼻骨等々から胎児の染色体異常の確率を計算するプログラムを運用するために、毎年画像提出による審査を受けているが、その運営団体でもある。

FMFの主な研究テーマ

FMFの主なテーマをHPから引用すると下記のものが挙げられる

  • 妊娠初期の胎児構造の診断
  • 胎児染色体異常のスクリーニング
  • 出生前診断における安全な技術の開発
  • 子宮内胎児治療
  • 妊娠高血圧症候群の予知と予防
  • 早産の予知と予防
  • 死産の予知と予防
  • 胎児発育不全の予知と管理
  • 多胎妊娠における合併症

これらの研究に対して。過去20年間で33億円余りのGrant(補助金・助成金)を獲得している団体であり、目覚ましい研究成果を挙げている。

17th World Congress in Fetal Medicineに参加して

アテネコンサートホールで始まった5日間の学会は、最初の2日間がEurofetusによる胎児治療を中心としたテーマ、残りの3日間がFMFが行っている妊娠初期診断、母体血中胎児DNAによる出生前診断、妊娠高血圧主効群の予知と予防や胎児発育不全の管理などであった。

驚いたのが、「プログラムがあってないこと」だった。

通常の国際学会(日本の学会もそうだが)では、プログラムに則って演者は決められた発表時間内に口演を終え、質疑も決まった時間で終わるため、せいぜい30分程度の遅れしかない。

しかし、この学会は、討論が尽きるまで行われること、場合によっては当日の夕方のプログラムを翌日に変えることまでして、夜9時までずっと議論をしている。

そもそも議論を重ねた上で合理的に物事と遂行するというヨーロッパ文化を体現したような学会だった。

世界潮流と日本の現状との乖離(かいり)

出生前診断を巡る現状として、そもそも日本は世界と一線を画している。

妊娠中の超音波検査による胎児の形態異常(奇形)の診断についても、多くの国は、妊娠のある決められた時期におけるスクリーニングプログラムが決まっている。
例えば、妊娠11週〜13週、妊娠18−20週、妊娠26−29週、妊娠34−36週というような時期に、ある決められた内容を全妊婦が受検する。
しかし、日本では、構造異常に対するスクリーニングに決まった基準はない。
というか、そもそも胎児超音波検査に健康保険の適応はない。

時々、胎児の何かの病気についての紹介患者から
「どうしていままで見つからなかったのですか?」
という質問を受けるが、返答に窮する。
「決まった診断方法がないので、見つけないことは批判できません」と、言いたくなる。

また、妊娠初期染色体異常のスクリーニングについても、出生前診断に対する議論が中々進まないため、乖離がある。
諸外国では、妊娠11週0日から13週6日の超音波スクリーニングへの助成や、ハイリスク群に対する染色体検査への助成などもあるが、我が国ではそもそも染色体検査自体は1-2%の妊婦が受けていると推定されるが(もっと多いか!)、にも関わらず、それを行うことやその後の対応については、曖昧な部分が多い。

今回の学会で感じたのは、妊娠初期超音波診断の進歩と構造異常に対する胎児治療へのアプローチの進歩だ。

診断、イコール治療、とはならないのが医学のジレンマだが、診断無くして治療はない。

二分脊椎に対する胎児治療は、今や子宮内内視鏡治療とその技術向上までトピックスが変わってきている。

いろんな意味で、ストレスと刺激を感じた学会だった。

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