新型コロナと妊娠について

※2020年2月27日夕の情報に基づいて一部表記を変更しました。
新型コロナウイルスの拡大が止まりません.外来でも妊婦さんから新型コロナウイルス感染症に関する質問がちらほらと出るようになりました.
新興感染症のため,妊娠とその予後に関する情報は不確かなものですが,現時点でわかってる,説明することができる情報についてまとめました.(初版,2020年2月25日;最終改定,2020年2月27日夕)

新型コロナウイルスとは

新型コロナウイルス(2019-nCoVと名づけられています)は,現在,世界的に猛威をふるい出している新型コロナウイルス(2019-nCoVSARS-CoV-2)による感染症(COVID-19)の病原体です.
コロナウイルス亜科のベータコロナウイルス属に含まれるウイルスには,風邪などの呼吸器感染症を引き起こすウイルスが含まれますが,重症化するウイルスとして,SARSコロナウイルス(SARS-CoV),MERSコロナウイルス(MERS-CoV)や今回の2019-nCoVが含まれています.コロナウイルス亜科には,ベータに対してアルファコロナウイルス属もあり,風邪の病原体のウイルスを含んでいます.つまり,コロナウイルスだから重症という訳ではありません.

SARSコロナウイルス(SARS-CoV)は,2002年に中国広東省を起源として流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)を引き起こしたウイルス,MERSコロナウイルスは,2012年に中等呼吸器症候群(MERS)を引き起こした病原体で,ヒトコブラクダからヒトに伝搬したウイルスです.今回の新型コロナといわれる感染症のウイルスはSARS-CoV-2なので、誤解しないようにしましょう。

ウイルスは,核酸の鎖でできた構造で,DNAでできているもの,RNAでできているもの,さらに2本鎖なのか1本鎖なのかで細かく分かれています.
コロナウイルス亜科は,1本鎖RNAで構成される第4群というグループの中に含まれるニドウイルス目のコロナウイルス科に含まれる亜科になります.ちなみに,インフルエンザウイルスは,同じく一本鎖のRNAウイルスです.

新型コロナウイルス感染症における妊娠への影響は

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による妊娠への影響は,流行して期間が短いことから詳しいことはわかりせませんが,いくつかの学会や団体からの情報がありますのでご紹介します.

1.中国からの報告

Previous studies on the pneumonia outbreak caused by the 2019 novel coronavirus disease (COVID-19) were based on information from the general populati…

世界的な医学雑誌であるLancetに,2020年2月12日に掲載された9名のCOVID-19妊婦の報告

  • 武漢大学中南医院に1月20日から31日の間に入院した9名の妊婦を対象として調査
    • 2019-nCoVSARS-CoV-2への感染は,咽頭ぬぐい液の検査で陽性であることで確認
    • 診療記録,検査データ,CT検査にて肺炎であることを確認
  • 9名の年齢は26-40歳,全例が帝王切開にて分娩.分娩時期は36-39週.
  • 全例が,感染者との濃厚接触の経緯あり.
  • 症状は,発熱78%, 筋肉痛33%, 倦怠感22%, 咳44%, 咽頭痛22%
  • CT検査にて89%が典型的なウイルス肺炎像
  • 帝王切開分娩の適応は,全例が肺炎とCOVID-19であること.
  • 分娩時の新生児の状態として,新生児仮死,呼吸障害などの異常は認めなかった
  • 6名に対して,羊水,臍帯血,新生児の咽頭ぬぐい液,母乳の検査を行なったが全例陰性だった.

わずか9名の報告ですが,少なくとも母体から胎児への感染(垂直感染)を認めないというデータになります.

2.米国CDCの情報

アメリカ疾病予防管理センター(Center for Disease Control and Prevention: CDC)が一般の人向けに出している2020年2月21日付のFAQを要約します.

Coronavirus disease 2019 (COVID-19) is a virus (more specifically, a coronavirus) identified as the cause of an outbreak of respiratory illness first detected i...

妊婦はCOVID-19に罹りやすいのか?
→妊婦は免疫学的にも生理学的にも呼吸器感染症に罹りやすい状態と言える.コロナウイルス関連の感染症であるSARS-CoVによるSARSやMERS-CoVによるMERS,その他のウイルス感染症であるインフルエンザなどでも,非妊娠時より重症化しやすいと言われている.そのため,手洗いや感染症者との接触を避けるなどの対策が望ましい

COVID-19による妊娠の影響は?
→COVID-19による妊娠への悪影響の情報はない.SARSやMERSでは流産や死産といった症例が認められた.妊娠初期の高熱が先天異常のリスクに関与している可能性はある.

胎児や新生児にウイルスは伝搬するか?
2019-nCoVSARS-CoV-2は主に飛沫感染で伝搬する.現時点では,胎児や新生児への伝搬について詳しいことはわからないが,最近の研究報告(前述)では,感染の事実はない.

児への影響は?
→限られた情報では,早産の可能性が増えるかもという報告があるが詳しいことはわからない.COVID-19については限られた情報のため,他のウイルス呼吸器感染症の情報は役にたつかもしれない.インフルエンザでは,早産や低出生体重児の増加という影響がある.また,風邪やインフルエンザで妊娠初期に高熱になると先天異常の可能性がある.

母乳を通じて伝搬するか?
→COVID-19で母乳にウイルスが検出されたという事実はない.SARS-CoVのデータでは,母乳には検出されなかったというデータがある.

3.日本産婦人科医会の情報

2020年2月18日付で掲載されている日本産婦人科医会の情報です.

https://www.jaog.or.jp/wp/wp-content/uploads/2020/02/200218.pdf

  • 症状はかぜ症状と同様で全身倦怠感が強く出ることが報告されています。 発熱が認められないものもあるとされていますが肺炎を発症して重症になって いる例が報告されています。(特に高齢者)
    下記の症状を伴う時には各地域の相談センター(下記問合わせ先)へ電話で相 談するようにしましょう。
    かぜの症状や 37 度5分以上の発熱が4日以上(妊婦は 2 日以上)続いている
    解熱剤を飲み続けなければならない
    強いだるさや息苦しさがある
  • 現時点では、妊娠中に感染すると妊婦さん自身の症状は(妊婦でない方に比 して)重くなるという報告はなく、少数例ではありますが赤ちゃんへの感染はみ られなかったとの報告が中国からありました。(判明次第、情報を追加します)。

4.まとめると

現時点では,妊婦さんがCOVID-19に罹患した結果,胎児や新生児に影響があるというデータはない,ということになります.これはインフルエンザや他の風邪症候群でも同様のことといえるでしょう.
筆者も幸いにもいまだ妊婦さんのCOVID-19には遭遇していません.しかし,実際に診療する場合にどうするかをあれこれと想定はしています.現時点では,軽症であれば経過観察,呼吸器症状が増悪すれば酸素投与や人工呼吸管理といった手順になるでしょう.児の娩出の判断は,妊娠の時期によってその都度判断するしかない,というのが現状といえるでしょう.現時点ではCOVID-19の妊婦さんのデータはすくないため、同じベータコロナウイルス属で発症したSARSやMERSのデータをもとにレビューを書きました。こちらは主に医療従事者の皆さんと共有したい情報になります。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の妊娠への影響と対策への所感(2020年2月27日)
新型コロナウイルス感染症を罹患した妊婦さんを想定し、SARSやMERSのデータをもとに考察した所感


妊婦さん,これから妊娠を予定している人は,手洗いの徹底,何らかの感染症状のある人との接触を避けるといった基本的な予防策をとることが大切になります.ちなみに、ドアノブ、蛇口、つり革などへの接触がどの程度このウイルスの感染性を有しているかは不明ですが、少なくとも手を洗うということに気をつける、ということしかないでしょう。

5.どうしても心配な人は

新型コロナウイルス感染症(新型コロナウイルス感染症対策の基本方針の具体化に向けた見解)について紹介しています。

厚生労働省のホームページでは,「特に、風邪や発熱などの軽い症状が出た場合には、外出をせず、自宅で療養してください。ただし、以下のような場合には、決して我慢することなく、直ちに都道府県に設置されている「帰国者・接触者相談センター」にご相談下さい。」として,
●風邪の症状や37.5°C以上の発熱が4日以上続いている(解熱剤を飲み続けなければならないときを含みます)
●強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がある
 ※ 高齢者や基礎疾患等のある方は、上の状態が2日程度続く場合
と記載しています.妊婦さんは,ハイリスクになりますので,2日以上の続いた場合は,相談されることを考慮してください.
なお,「帰国者・接触者相談センター」に連絡された場合は,地域の感染小泉門病院への受診を勧められると思います.つまり,妊婦健診で通院されている医療機関とは異なることがありますので,そのつもりでお願いします.

帰国者・接触者相談センターのリンクは下記になります.

新型コロナウイルスに関する帰国者・接触者相談センターについて紹介しています。

6.妊娠中の検査は?

ところで,いざいざ医療機関を受診された場合の検査などについてご心配な方もいるかと思います.
肺炎を疑った場合は,胸部単純エックス線検査(レントゲン検査)や胸部CT検査を行うことがありますが,下腹部を遮蔽(さえぎって)して行えば,胎児への影響はないと考えてください.それよりも母体の状態を正確に把握することが優先事項となります.
解熱剤が必要な場合,妊娠28週以降には使用を控える薬剤もあります.感染症科や呼吸器内科などの専門診療科と産科が連携して診療にあたることになるかと思います.

 

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