させていただく症候群

教授室の窓から

させていだたく症候群ー紹介状編

単なるおっさんのぼやきと思ってもらってもよいのですが、最近とても目につく光景があります。

他の医療機関や他の診療科からの紹介を受けたとき、医師は返事を書きますが、

「診察させて頂きました」

と書いてある文面をよく目にします。

私は国語学者ではないので詳しくは言えませんが、これは「間違い」です! たぶん(^_^;

「泌尿器科へのご紹介でしたが、産婦人科疾患を疑いましたので診察させて頂きました」

なら正しいかも知れません。

つまり、「相手の意向に沿わない、あるいは、意向を確認しなければいけない」場合には、“させていただく”は正しいのでしょう。

でも、目の前の患者さんは、確実に自分たちへ紹介されてきた患者さんです。ならば、

「診察いたしました」か「診察しました」でよいのではないか?

確かに、最近スマホの機種変更をしたときは、カウンターの係の方が、「こちらで処分させて頂きますね」と確認していた。

これは、私が処分してくれと言う前の確認である。

なので、お願いだから紹介状の返事は「診察いたしました」にして欲しい。

させていたく症候群ー診察編

確かに、産婦人科の診察は配慮が必要だ。

ただ、内診台で患者さんに「中を診させて頂きますね」は妥当だろうか?

患者さんとは厳密には診察と言うことで了解を得た間柄である。

ならば「診ますね」ではいけないのだろうか。

超音波検査をさせていただきます、採血をさせていただきます、帝王切開をさせていただきます、、、、、。ちょっと過剰じゃないかなあと思うのは気のせいでしょうか?

させていただく症候群ー学会発表編

以前は(この言葉を使い出すともうおっさんですが)、学会発表の時は、座長が「次の演題はなんとか症候群です」と言えば、早速、プレゼンに入ったもんだった。

いつからか

「発表します」

という言葉と共にプレゼンを開始する人が増えた。そして最近は、

「発表させて頂きます」

だ!

座長をしていて、ちょっとひねくれて「そんなこというなら発表しなくていいよ」なんていったらどうなるんだろう?って思ったこともあった。

演題を申し込んで、プログラムにも採用されているのに、つまり、学会の意向は十分に伝えているのに「させていただく」はやめて欲しい。

「演題申し込みの時は、こんな抄録を書きましたが、全く違う症例について発表させて頂きます」

だったら、させていただく症候群としては正しい症状なのでしょうが、まあその発表はぜったしに阻止しますけど。

医師は国語を学ばない

医学部といえど大学なので、教養課程としての項目はある。しかし、医師は国語を学びません。なので、実は言葉遣いはみんなでたらめなのです。

ただプライドの塊人間の集まりという傾向はあるので、やたらと気を遣います。そのため、他の診療科にお願いするときの紹介状は大変な分娩になります。

「平素より大変お世話になります。当科にて外来通院中の方です。この数日、下腹部に痛みを訴えられていますが、産婦人科的には特に著変を認めません。誠にご多忙のところ恐縮ではございますが、貴科にて御高診・ご加療いただけますと幸いに存じます。何卒よろしくお願い申し上げます。拝:日本太郎」

なんて紹介状を以前は手書きで何回も書きました。

「下腹部痛が主訴の患者さんです。産婦人科疾患は否定的です。お願いします。」

と言いたいところですが、このような簡潔な文章を書いてしまうと、先輩には怒られるわ、先方も不快な思いをするわと、大変なことになったでしょう。
立派な尾鰭をつけないといけないのですが手もくたびれます。

最近は電子カルテなので、みんな単語登録していますね、このての文章。

ただ、へりくだりが行き過ぎると「させていただく症候群」になってしまいます。

私も言葉は苦手ですが、いつか重症のさせていただく症候群にならないよう予防をしないとと思っています。

医学生やレジデント皆さんへ早いところワクチンを普及させないといけないですね(^_^;

 

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