Selective IUGR |重症胎児発育不全を伴う一絨毛膜性双胎

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Selective IUGR(重症胎児発育不全を伴う一絨毛膜性双胎)という概念がでてきた経緯

一絨毛膜性双胎の合併症として、これまで重要視されてきたものとして双胎間輸血症候群(TTTS)があります。TTTSは、別ページの説明のように、受血児が羊水過多、供血児が羊水過少 という状態になっています。

そして、重症のTTTSに対して、2002年より我が国では、胎児鏡レーザー手術(胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術)が行われるようになっています。

TTTSに対する胎児鏡レーザー手術が全国的にも、また、世界的にも行われるようになってくると、「手術の適応にならない双子は大丈夫なのか」という議論がなされるようになってきました。

「手術の適応」というのは、「このような状態になったら手術をした方がいいだろう」という基準になります。当然ではありますが、手術をしないことよりもした方が治療成績が良い場合、あるいは、他の治療法よりも手術の方が治療成績が良い場合、には手術が望ましいので、そのような適応になれば手術について患者さんに提案されます。

ところが、ある基準に該当する患者さん達への手術によって、その方達の状態が大きく変わった場合、基準を満たしていない残りの人たちの中にも実は治療を受けた方が良いのではないか、ということが問われるようになるのが常です。

一絨毛膜性双胎の場合、「胎児鏡レーザー手術の適応となるTTTS」以外の場合は、そのまま様子をみていてもよいのか、という議論がなされるようになってきたのです。

Selective IUGRとは、“胎児鏡レーザー手術の適応となるTTTS以外の双子だけど治療をした方がいいんじゃないか”という概念にまさにあてはまる状況にある赤ちゃん達なのです。

Selective IUGRとは

Selective IUGR とは、文字通り英語で、Selective Intrauterine Growth Ristrictionの略語です。日本語での適切な言い回しがないため、双子を専門にしている医師達の中で、重症胎児発育不全を伴う一絨毛膜性双胎と呼んでいます。

一絨毛膜性双胎が、一つの胎盤を二人で共有していることは、すでに別稿で説明していますが、二人の胎児が、同じような大きさで胎盤を共有しているとは限りません。

下の絵(写真を加工したもの)のように、右側の胎盤領域は大きく、左側は三日月型で少ししか領域がありません。

Selective IUGRの胎盤

このような場合、左の胎児の発育は制限され、右の胎児と比べると体重はかなり小さくなります。

このように、胎盤のそれぞれの領域バランスの差が大きくなって、二人の胎児の発育差がある程度以上大きくなった状況を Selective IUGR と呼びます。

Selective IUGRではどんなことが困るの?

Selective IUGRで、小さい方の児(小児とここでは呼びます)は、成長が制限されるため胎児発育不全という状況になりますが、状況が重症となれば、胎児胎盤循環に変化をきたして、場合によっては、心臓が止まる、つまり、胎児死亡に至ることがあります。

その場合、胎盤で血管がつながっている大きい方の児(大児とここでは呼びます)から亡くなった小児に血液が流れてしまいます。そうなると大児は失血して、中枢神経障害や胎児死亡・新生児死亡に至ることがあります。

小児が胎児死亡までは至らないとしても子宮内での環境が悪化した場合、胎児が胎外生存可能な時期であれば、(生存可能とは言っても)非常に早い段階で早産として分娩としなければならない状況もあります。
その場合は大児も分娩になりますので、二人とも早産児となり、未熟な発達段階での出生となります。

では、すべての selective IUGRといわれる状況が問題になるのか、それとも問題となる状況を予測するための指標があるのか、ということが疑問として涌いてきます。
また、TTTSと同じように胎児鏡レーザー手術を行った方が妥当なのか、ということにも多くの議論がなされてきました。

そのため、我が国では胎児治療を行っている施設が中心となって Selective IUGR の現状についての調査研究を行いました。

研究結果の概略を下記に示します。

81人のselective IUGRの患者さんについて、小さい児の血流異常(臍帯動脈の血流異常)の有無とパターンによって3つのタイプに分類した。
Type Ⅰは血流異常なし:Type Ⅱは常に臍帯動脈血流が途絶/逆流:Type Ⅲは血流異常が周期的である
対象となった81人の内で18人はTTTSを合併したため除外し、残りの63人で検討した。
胎児死亡の合併率は、小児ではType Ⅰ、Ⅱ、Ⅲがそれぞれ4.3%, 29.6%, 15.4%で、大児ではそれぞれ4.3%, 22.0%, 0.0%だった。
生後Ⅵっかげつでの生存児の神経学的合併症は、小児がType別にそれぞれ4.3%, 14.8%, 23.1%、大児がそれぞれ0.0%, 11.1%, 38.5%だった。
小児に臍帯動脈血流異常が認められる場合、経過観察では予後が望ましくなかった

という結果でした。

つまり、小児の臍帯動脈血流異常があるということは、児の生存率や神経学的後遺症の合併においてリスクであるということが明らかになりました。

その後、リスク因子の抽出を行い、胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術のパイロットスタディーというものを行った結果、後述する適応の場合には広義の双胎間輸血症候群として治療を行うということになりました。

Selective IUGRとTTTSの違いは?

TTTSとSelective IUGRの概念

Selective IUGRとは、これまで説明しましたように、一人の胎児の発育が制限された状態をいいます。ときには二人とも発育が制限されます。
この場合、羊水量が多すぎるとか、少なすぎるとかいうことが無関係に言い表します。

重症のTTTSとは、羊水過多と羊水過少の状態です。ただし、Selective IUGRの状態で、様子をみているとTTTSを合併してくることがあります。

つまり、二つの状況は「大きさ」と「羊水量」という別々の物差しで判断した状況になっていて、一部は重なった状況になっているといえます。

Selective IUGRに対する治療は?

Selective IUGRの中でも、小児の循環状態が悪化し、羊水過少となっている状況の場合には、胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術が適応となります。

手術の適応基準については、詳細な診断が必要となりますので、専門施設でのご相談をお勧めしますが、適応の概略を下記に示します。

Selective IUGRにおける胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術の適応基準(抜粋)
小さい児の血流異常を認めること
小さい児の羊水過少をみとめること

現在、これらの適応に該当する妊娠16週から25週の方に対して治療が行われています。
詳しくは、各地域の胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術の施行施設にご相談下さい。

※著者の所属施設である東邦大学医療センター大森病院はこちらをご参照下さい。

お問い合わせは下記へ

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