45歳以上の妊娠は帝王切開率が高くなる

医学・医療

高齢妊娠

「高齢妊娠」という語句がちまたでは使用されていますが、高齢妊娠ってなんでしょうか?
また、何歳からが高齢妊娠なのでしょうか?

「高齢妊娠」という用語は、国際疾病分類(ICD-10)に掲載されている用語で、統計上の分類に使用される言葉です。
日本では、慣習的に35歳以上の妊婦さんに対して使用されることが多いですが、厳密な定義はありません。実際、日本産科婦人科学会が出版している産科婦人科用語集・用語解説集にも高齢妊娠という語句は見当たりません。
ただし、国際的にも「Advanced maternal age(進んだ+母体の+年齢)」という用語があり、一般的に35歳以上とされています。

システマティック・レビューとメタ解析

今回取り上げた論文は、American Journal of Obstetrics and Gynecologyの2023年4月号に掲載されたシステマティック・レビューに基づいたメタ解析の結果です。

システマティック・レビューというのは、一定の基準や方法論をもとに質の高い臨床研究を調査して、エビデンスを適切に分析・統合を行うことです。ざっくり言うと、いいかげんな臨床研究の結果を沢山集めてきて、「研究結果からはこうなっている」と述べても、そもそもその研究手法のエビデンスレベルが高くなければ、集める意味はありません。つまり、システマティック・レビュー=系統的に評価することで、集めたデータの信頼性を高くする方法です。

一方、メタ・アナリシスは、過去に行われた複数の研究結果を統合して統計解析する方法です。
研究結果というのは、様々な国や地域においてそれぞれ行われます。また、研究された時期が異なったり、同じようなものを比べているようでも、多少違いがあります。
日本で行った研究結果が、他の国にあてはまるのか、あるいはその逆もあるのか、ということを言えば、本当は世界全体で研究を行わなければ何も言えないでしょう。ただそこには限界があるので、いろんな国や地域で行われた研究結果を集めてきて、統計解析をやり直す(まとめて行う)方法です。

45歳以上の妊婦の周産期予後は?

Just a moment...

今回取り上げた論文は、新潟大学の研究者が行ったシステマティック・レビューとメタ解析の論文です。

2010年から2022年までに発表された45歳以上の妊婦の予後を解析した4209編の論文を集めて、その中から質の高い24の研究論文をメタ解析に用いています。
その結果、45歳以上の妊婦は45歳未満の妊婦と比較して、

  • 帝王切開率が2.87倍と高かった
  • 緊急帝王切開率は0.61倍と低かった
  • 妊娠高血圧腎症、妊娠糖尿病、前置胎盤、常位胎盤早期剥離、後産期出血、早産は、いずれも高かった

という結果でした。

帝王切開率が高くなるのに、緊急帝王切開率は低くなる、ってどういうこと?

と思いがちですが、妊娠高血圧腎症、前置胎盤、早産などの因子によって、予定的に行う帝王切開が増えるために、かえって緊急帝王切開になる可能性の妊婦さんが減るという影響も、この結果には表れていると思いました。

いずれにしても年齢を重ねた妊婦さんは様々なリスクが高くなりますので、その点を念頭に入れて妊娠中の管理を行う必要がありますし、比較的年齢の高い妊婦さんは、そのような意識で妊婦健診や分娩に備えていただきたいと思います。

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