流産後の妊娠時期について
残念ながら流産に至った患者さんからたびたび質問されることが、「次の妊娠はどの程度待ってからがよいのでしょうか」という質問です。
あまり早くに妊娠すると悪影響が出る?という噂もあるようです。
2年前ですが、Human Reproduction Update という国際的に権威のある雑誌に、多くの臨床研究から解析された論文が発表されました。
Interpregnancy interval following miscarriage and adverse pregnancy outcomes: systematic review and meta-analysis - PubMed
This is the first systematic review and meta-analysis providing clear evidence that an IPI of less than 6 months followi...
英国の周産期医療に関する疫学調査のグループが発表した論文です。
「流産後は六ヶ月以上経過してから妊娠する方が望ましい」という風潮が流布した背景には、それまでの様々なデータやWHOの2005年の見解もあったようです。
しかし、すでに十数年までの報告ですし、残念ながら流産に至ってしまったカップルの中には、できるだけ早く次の妊娠を、という望みを抱いている場合も多いでしょう。
今回、私が取りあえげた論文は、「流産後半年以内の妊娠は何らかの影響を与えるか?」という仮説に対して過去の研究報告を分析したものです。
細かな点は省略しますが、16のシステマティック・レビューを解析し、そこから10の論文を集めてメタ解析をしたもので、対象症例数は約100万人になります。
結論をいえば、
- 流産後半年以内に妊娠したグループは、その後の妊娠での流産リスクが0.82倍だった
- 流産後半年以内に妊娠したグループは、その後の妊娠での早産リスクが0.79倍だった
という結果でした。
その後の死産率、帝出生体重児の率、妊娠高血圧症候群の発症率に影響はなかったとの結論でした。
流産リスクが0.82倍、早産リスクが0.79倍だったということ(統計学的に有意)は、流産後の妊娠について、「少し期間をおいた方がいいですね」というのは間違いということになります。