受動喫煙に関しての話題が、昨今、メディアで取りざたされていますので、妊娠への影響はないのか、という点で、一つの論文を取り上げてみました。
もともと妊婦自身が喫煙することが胎児へ与える影響については様々な報告があります。胎児の成長、出生後の発育・発達への影響など様々なことがいわれているのが現状でしょう。
しかし、受動喫煙はどうでしょうか。
“passive smoking”というキーワードで文献検索をした際にはそれほど多くの研究結果がなされていないのが現状です。
環境の人への影響ということを調査するには膨大なデータと時間がかかるという難点がありますし、ましてや胎児への影響となると、妊婦さんではなくお子さんの追跡調査となるため、調査研究自体の質を保って遂行するのは大変だろうなと感じます。
また、本当にその因子が影響しているのか、実は喫煙ではなく食べ物ではないのか、他の因子ではないのか、といった様々な因子が絡むため、データの検証には慎重さが必要です。
少し時間があったので、PubMedという医学研究では最も用いられているサイトで文献検索をした結果みつけた受動喫煙の胎児への影響の論文を取り上げてみます。
2015年にPLoS Oneという雑誌に掲載されているものです。
著者のイギリスのDundee大学のSabbaghらの報告になります。
“なんらかの症候群として引き起こされる口唇口蓋裂”ではない、いわゆる単独疾患としての口唇口蓋裂は、妊娠中の喫煙によって増加するというデータが過去に報告されています。そこで彼らは、その根拠に基づいて、「妊婦の受動喫煙がどのように胎児の口唇裂の合併に対して影響するか」という仮説を立てて研究しています。
研究手法は、過去の研究論文を集めて解析する“メタ解析”という手法です。彼らは、1000編余りの研究論文の中から14編を抽出して解析を行いました。
その結果、妊婦の受動喫煙は、2.1倍(95%信頼区間:1.54-2.89)のオッズ比で口唇口蓋裂の発生を高めるというというものでした。口唇裂と口蓋裂に分けた検討でも、それぞれ2.05倍、2.11倍というオッズ比でした。
異なる調査法からの解析のため、数値に関しては修正が必要ですが、もろもろも因子を調整したところ、受動喫煙は約1.5倍のリスクで口唇口蓋裂を増加させると結論づけています。
約1.5倍という数字をどのように捉えるかはそれぞれでしょうが、「受動喫煙が胎児の口唇口蓋裂の発生に対して影響はないよ」とは言えないでしょうね。
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