ポリフェノールと胎児動脈管との関係

教授室の窓から

最近、少し気になることがあったのでざっと論文を調べてみました

きっかけは、「超音波検査で胎児の動脈管が細いかも」という相談でした
確かに、肺動脈から胸部大動脈につながる動脈管が細くなっていました

出生後に閉じるはずの動脈管が胎児期に閉じることを胎児動脈管(早期)閉鎖などといいます
右心室から肺動脈に駆出された血液は、胎児期には肺動脈にあまり流れず、バイパスである動脈管を通じて胸部大動脈へ流れこみます
もし、動脈管が胎児期に閉じてしまうと、右心室から肺動脈に血液を駆出することができず、右心不全という状態が引き起こされます

胎児期に動脈管が閉じさせる原因

胎児期に動脈管が閉じる原因として、非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)とポリフェノールをたくさん含んだ食品の過剰摂取が挙げられます
といっても、NSAIDsを服用したから必ず起きる、ポリフェノールを含んでいない食事をすべき、という意味ではありません
NSAIDsが必要な場合もありますので、医師もその可否を慎重に判断しますし、ポリフェノールは「毒」ではありませんから、神経質にならずにバランスの良い食事を心がけるというので良いと思っています

胎児期動脈管収縮とその改善を観察した研究

ちょうど1年前に Ultrasoud in Obstetrics and Gynecology という雑誌に掲載された論文に興味深いデータがありました

この雑誌は、産婦人科学分野ではかなり評価の高い論文を掲載していて、私たちの教室からもこの雑誌に掲載されれば相当な名誉になると思っています

論文のタイトルは

Improvement in fetal pulmonary hypertension and maturity after reversal of ductal constriction: prospective cohort study

といい、ブラジルからの研究論文です

Improvement in fetal pulmonary hypertension and maturity after reversal of ductal constriction: prospective cohort study - PubMed
Resolution of fetal ductal constriction is followed by a fall in MPAP and by an increase in pulmonary vascular maturity,...

胎児の動脈管収縮の70症例あまりについて、肺動脈の血管抵抗や動脈管を通過する血流の速度を計測し、ポリフェノールを多く含んだ食品を控えるか、NSAIDsの服用をやめた後に(2週間)、再度それらの計測をおこなったところ、

  • 推定肺動脈圧が低下
  • 動脈管を流れる血流速度が低下

の2つ事象が確認されたという研究です

この研究から導かれる結論は、

胎児動脈管の収縮は、NSAIDsを止めたりポリフェノールの過剰摂取を控えることで改善する

ということです

ポリフェノール・リッチは推奨されるのか?

最近、妊婦さんの中には、妊娠したので緑茶をやめて、ルイボスティーを飲むようにした、という方が多いらしいですね
緑茶に含まれるカフェインを避けるためらしいですが、産婦人科医として長く診療にあたっていますが、緑茶が悪いという経験は皆無です

一方、カフェインレスですが、実はルイボスティーはポリフェノール・リッチです

こんなことを書くとルイボスティー派から苦情が来そうですが、

あくまでもポリフェノール・リッチな食品の過剰な摂取の場合には動脈管が収縮する可能性があるかも

というお話でした

 

 

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